鮨処なごやか亭

幸福をもたらす心のあり方、  -利他の心―

稲盛和夫氏の説かれる「フィロソフィ」の素晴らしさの根拠の一つ、日本航空の再生という実績で教えて下さった「利他の心」についてのお話を講話抜粋文章の引用でご紹介させて頂きます。(機関紙125号塾長講話抜粋)

 

『私は、日本経済を再生するため、日本航空に残る社員の雇用を守るため、利用者である日本国民の利便性をはかるためという、日本航空再建を引き受けた理由、言わば「大義」のために、老骨にむち打ち、無報酬で全身全霊を傾けて再建に取り組んできました。社員たちも、同じ思いになってくれ、再建に向けて懸命に取り組んでくれました。そのような利他の心だけで懸命な努力を捧げている私たちの姿を見て、神様、あるいは天が哀れに思い、手を差し伸べてくれたのではないだろうか。私には、そう思えてならないのです。そうした「神のご加護」なくして、あのような奇跡的な回復などできるはずがないと思うのです。

 

あるいは、次のように表現することもできるかもしれません。利他の心は、自力を超えた力、いわば「他力」の風を味方にすることができるのです。

 

人生を、大海原を旅する航海にたとえるならば、我々は思い通りの人生を送るためには、必死で自力で船を漕がなければなりませんが、それだけでは遠くにたどり着くことはあまり期待できません。船の前進を助けてくれる他力の風を受けるための準備をしなければなりません。

 

私は、帆を張って他力の風を待つときの、その帆を張るという行為が、自分の心を美しい心に磨いていく営みそのものではないかと思います。

 

考えてみればこの世の中に自力でやれることはそう多くありません。他力を受けなければできないことがほとんどです。けれども、他力を受けるためには自力で帆を揚げなくてはいけない。その帆を揚げる作業とは、自分自身の心をきれいにして、利己まみれの心ではなく、「他に善かれかし」という美しい心にすることです。つまり利他の心を持つということです。

 

「俺が俺が」という利己の心で揚げた帆は、穴だらけです。よしんば他力の風がいくら吹いても、帆は穴が空いていますから通り過ぎてしまいますし、船は決して力を得ることはできません。それに対して、利他の心で掲げた帆は穴が空いていないすばらしい帆です。必ず他力の風を受けられます。

 

そのことを、日本航空の再生が証明しています。日本航空だけではありません。八十一年にわたる人生のなかで、私はそうした経験を幾多もしてきました。それだけに、利己的な欲望を抑え、美しい利他の心を発揮させていくことが、幸福をもたらすベースだと信じています。

 

この世界には、常に我々を幸せにしていく風、つまり他力の風が吹いています。その他力の風を帆に受けるためには、立派な帆を張らなければなりませんが、帆はその人の心の状態でつくられるものです。利己的な欲望ではなく、利他の美しい心、他に善かれかしという慈悲の心で帆を張れば、自然と、この世界に吹いている神秘的なすばらしい力を得ることができます。これは神様から来る力かもしれませんし、宇宙から来る力かもしれません。そのような他力を帆にたくさん受けることで、自力で漕ぐ力以上の仕事ができ、人生を全うすることができます』

 

大変に分かりやすい素晴らしい「利他の心」についてのお話だったかと思います。他力の風を受けて、より幸せになることができるように、自分の心を美しい心に磨いていく努力をしていきましょう。

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